月夜と少年は、多様なクリエイションを通じて、
個人が、世界を想像する領域を広げて行く事を支えます。
2008年の春、「gallery 月夜と少年」は芸術の力が世界を変えて行く事を夢みて始まりました。その時から3年の間に多くの人に出会い、支えられ、多くの活動を行う事が出来ました。展覧会を行う場所という、ギャラリー従来のスタイルに留まらず、ライブイベント、ワークショップ、トークショウ、果ては森林再生といった活動まで、実に多種多様な経験を積む事が出来ました。その経験は、この場を運営する私達自身に新しい世界を見せてくれ、そして、世界を深めてくれる素晴しい機会となりました。世界が広がるという事は、自分自身の内なる可能性もまた広がるという事でした。正に喜びと幸せの体験でした。そして、今私達は、自分達以外の誰か、たった一人の人にでも、その人の心の奥深くにまで届く喜びと幸せの源泉を育みたいと思っています。
「月夜と少年」というこの場所が、誰かの"世界を想像する領域"を広げていく事の支えとなる日まで。
2011.03.01 吉田航
「月夜と少年」の由来
この場所を始めてから、よくこの名前の由来を訊ねられます。ギャラリーの名前としては、少々ロマンチック過ぎますし、そもそも日本語で名前を付けているギャラリーというのも少ないのかもしれません。この「月夜と少年」という名前は、明治から昭和にかけて活躍した児童文学作家の小川未明氏が書いた、同名の短編小説の表題より拝借致しました。田舎から丁稚奉公に出て来た、顔も名前も知らない二人の少年が、自分の愛する者を思い浮かべながら、月を並んで眺めているうちに親しくなっていく、という話なのですが、その少年が月を眺める姿と、アートや音楽に触れる姿というものは重なる所があるのではないか、と思ったのです。この場に集う人達が、芸術というものを通してなら、それぞれが違う事を想いながらも、何かがちゃんと繋がっているんだという事を実感出来るのではないか、またそうであって欲しいという願いから、「月夜と少年」と名付ける事になりました。
2008年のオープン当初は「gallery 月夜と少年」としていましたが、2011年の6月より「月夜と少年」となります。
【月夜と少年/著:小川未明】
町のある商店へ田舎から丁稚が来ました。ちやうど同じ年頃の子供が二人新たに奉公したのであります。
この二人は、産まれた故郷が互に遠く隔つてゐました。さうして、此処に来るまでは、互に顔を見たこともなければ、そんな子供が彼処に住んでゐるといふことも知らなかつたのであります。
けれど、始めて町に出て同じ家に奉公するやうになつて、顔を見合はしますと、いつになしに二人の心には親しみが生じて来たのでありました。
~中略~
二人の少年は、互にかたりました。さうして、優しい人の顔だけが月の中に映つて見えるのだと二人は信じました。この二人の少年は其から一層仲よくなりました。さうして月夜には二人は並んで月を眺めました。